ソプラノ歌手 都筑夕姫菜さんインタビュー

ドイツ・ドレスデンで学びながら演奏活動を続けるソプラノ歌手、都筑夕姫菜さんにピアノスタジオ aile 横浜をご利用いただきました。
プロフィール
北鎌倉女子学園高等学校音楽科をピアノ専攻で卒業後、声楽に転向。武蔵野音楽大学、同大学院修士課程を声楽専攻で修了。オペラ《魔笛》パミーナ役、《クリストフォロス》子供役などで出演。2025年に渡独し、現在はドレスデン音楽大学修士課程にて、クラシックから現代音楽まで幅広いレパートリーに取り組んでいる。2026年秋からはエラスムス交換留学生としてザルツブルク・モーツァルテウム大学に留学予定。ジョバンニ・オモデオ財団奨学生。
Q. 声楽家を目指したきっかけを教えてください。
もともとはピアニストを目指して、中学から音楽科のある学校でピアノを専門に学んでいました。劇団四季の舞台を観たことが、歌に興味を持った大きなきっかけです。言葉と音楽、演技が一体となって表現されていることにとても感動して、歌を学びたいと思うようになりました。その後、大学進学を機に声楽へ転向し、本格的に声楽を学び始めました。勉強を続けていくうちに、自分の理想とする声や、歌だからこそできる表現にどんどん惹かれていって、声楽家を目指すようになりました。
Q. もともとはピアノを専攻されていたとのことですが、声楽へ転向された経緯を教えてください。
ピアノを専攻していた頃は、実は練習はあまり好きではないのに、本番で演奏することは好き、という少し変わったタイプでした(笑)。決してずば抜けていたわけではないのですが、小さい頃から続けていた分、音楽を感覚的に捉えることは比較的得意だったのだと思います。コンクールで入賞したり、学内の演奏会に選んでいただいたりと、結果につながることもありました。一方で、中学生の頃にミュージカルの舞台を観たことをきっかけに歌への興味が強くなり、高校ではピアノを専攻しながら声楽も学び始めました。次第にもっと本格的に歌を勉強したいという気持ちが強くなり、大学進学を機に声楽へ転向しました。ただ、転科してみると、声楽ではピアノの時のようには上手くいきませんでした。最初から声楽に向いていたわけでもなく、どれだけ練習してもなかなか思うような結果につながらない時期が長く続きました。それがずっと悔しかったんです。だからこそ気持ちが途切れず、勉強を続けてこられたのだと思います。振り返ると、すぐに結果が出なかったことも、声楽を続けてきた理由の一つなのかもしれません。

Q. これまでの音楽活動の中で印象に残っている舞台や演奏会はありますか?
ドレスデン城で、現代アートの展示と一緒に演奏した公演がとても印象に残っています。演奏中、お客さんは自由に会場を歩きながらアートを鑑賞してもいいですし、スクリーンに映し出された楽譜を見ても、演奏者のすぐ近くまで来てじっくり観察してもいい、という空間でした。普段のコンサートではステージと客席がはっきり分かれているので、最初はその距離の近さに驚きましたが、とても新鮮な経験でした。
Q. オペラ、歌曲、現代音楽など幅広い作品に取り組まれていますが、それぞれの魅力を教えてください。
オペラは、音楽だけでなく、演劇、文学、舞台美術、衣装、照明など、さまざまな芸術表現が一つになってつくられる総合芸術です。そのため、歌手だけでなく、合唱、オーケストラ、指揮者、演出家など、本当に多くの人が関わります。そうした大きな舞台の中で、生のオーケストラとともに、マイクを使わず歌声を客席まで届ける迫力とエネルギーは、オペラならではの魅力だと思います。また、同じ作品でも演出によって全く違う世界に見えることがあるので、そうした違いを楽しめるのも面白いところですね。
歌曲は、歌手だけが主役というより、ピアニストと一緒に音楽をつくっていくところに面白さがあります。詩に込められた言葉と音楽をどう結びつけて表現するか、細かく考えていきます。オペラのような舞台装置や衣装がない分、音楽と言葉そのものから情景や感情を立ち上げていくところが楽しいですね。
現代音楽は、そもそも一括りにはできないほど幅広いジャンルです。非常に精密なアンサンブルが求められる作品もあれば、即興性の強い作品もあります。ただ、最近特に感じているのは、視覚的な要素も作品の一部になっていることが多いということです。映像を使う作品もありますし、演奏者の動きや表情、立ち姿そのものに意味がある場合もあります。だからこそ、演奏者はただ「音楽家」であるだけではなく、「表現者」でいなければならない。その自由さや可能性の広さが、現代音楽の大きな魅力だと思っています。
現在の活動について
Q. 現在はどのような活動に力を入れていらっしゃいますか?
現在は現代音楽を中心に勉強しています。作曲家本人とリハーサルを行ったり、作曲科の学生と一緒に新しい作品をつくり上げたり、現代音楽を専門とする団体で演奏したりと、実際の演奏活動を通して学ぶ機会が多くあります。また、一時帰国中には、ヨーロッパで学んでいる仲間たちと一緒に、クラシックと現代音楽を組み合わせたプログラムでコンサートを開催しました。現代音楽で得た経験を生かしながら、クラシックのレパートリーにも継続して取り組んでいます。

Q. ドイツ留学で学んでいることや、日本との違いを感じる部分はありますか?
日本との違いを感じることは沢山ありましたが、学校の環境で特に印象的だったのは、演奏活動に伴う身体や声の不調に対するサポートがとても充実していることです。大学には、学生が無料で診てもらえる音楽家のための医師がいます。私自身も一度喉を痛めたことがあり、その際には診察だけでなく、専門家による声のトレーニングを半年ほど継続して受けることができました。また、演奏技術だけではなく、卒業後に音楽家としてどう仕事をしていくかを考える機会が設けられていることも印象に残っています。実際に第一線で活動している方から、仕事のつくり方やキャリアについて話を聞くセミナーが必修科目としてありました。そこで初めて知ることも多く、自分が卒業後にどのように活動していきたいのか、具体的なビジョンを考えるきっかけにもなりました。
Q. 最近挑戦している作品や研究テーマについて教えてください。
最近は、現代音楽における演奏者のオリジナリティや表現のあり方について考えることが多いです。クラシックとはまた異なるアプローチが求められる部分があり、どう演奏するかだけではなく、自分自身がどう作品を見せるかということも大切だと感じています。また、今後はさらに視野を広げて映像や照明、美術、舞踊など、ほかの芸術分野とのコラボレーションにも挑戦してみたいと思っています。
Q. 2026年秋からザルツブルク・モーツァルテウム大学への留学を予定されていますが、今後の目標を教えてください。
留学1年目は自分を見つめ直して再構築する年だったので、今年度は挑戦する年にしたいと思っています。今後の大きな目標としては、現代オペラに出演することです!

Q. 声楽家は普段どのような練習をされていますか?
まずは顔や身体の余分な力を抜いて、呼吸練習をしてから発声のウォームアップをします。身体と声をゆっくり起こしていくような感覚です。その後、実際に曲を練習します。初めて取り組む曲は、最初から歌うと喉が疲れてしまうので、私の場合は、まずピアノで伴奏部分を弾いて曲全体を把握してから、細かく音楽を見ていきます。実は声楽家の練習は、声を出している時間だけではありません。歌詞や発音のチェック、楽譜を読み込んで曲の解釈を深める時間など、音を出さずに練習する時間もとても長いです。
Q. 自宅や大学での練習とスタジオ練習はどのように使い分けていますか?
自宅では、あまり声量を必要としない声の調整や呼吸練習をしたり、楽譜と向き合う時間に使っています。大学の練習室は、授業の空き時間やレッスンの直前など、日々の練習で使うことが多いです。スタジオは、本番が近づいて集中して練習したい時や、外出先で練習場所が必要な時に利用しています。また、共演者とのリハーサルにも使います。遅い時間まで借りられるスタジオは、お互いに予定が詰まっている時でも合わせの時間を確保しやすく、とても助かっています。
Q. ピアノ伴奏付きで練習することの重要性を教えてください。
私は、ただ伴奏をしてもらうというよりも、一緒に音楽をつくっていけるピアニストと練習することを大切にしています。一人で楽譜を読んでいるだけでは気づかなかったことを、ピアニストが別の視点から見つけてくれることもありますし、お互いの解釈やアイデアを共有することで、音楽がより深まっていきます。また、ピアノパートをきちんと把握することもとても重要です。自分の歌の旋律だけを見るのではなく、ピアノがどんな音やリズムを弾いているのか、どのように歌と関わっているのかを理解することで、フレーズの作り方や言葉の表現も変わってきます。

Q. コンクールや本番前にはどのような練習をされますか?
本番前は、とにかくイメージトレーニングをします。目の前にはお客さんがいて、舞台に立ってライトを浴び、その場の空気を吸っているところまで、できるだけ具体的に想像します。そして、本番と同じような緊張感を持って演奏します。そうやって本番を疑似体験しておくと、実際に舞台に立った時にも、不思議と落ち着いて演奏することができます。
Q. 声楽を始めたい方へアドバイスをお願いします。
自分の声を好きになることは、なかなか難しいことかもしれません。でも、音楽を愛して、歌うことを楽しんでほしいです。そして、呼吸することを忘れずに。時間をかけて、自分の声と身体にじっくり向き合ってみてください。
ピアノスタジオ aile 横浜について
Q. ピアノスタジオ aile 横浜をご利用いただいたきっかけを教えてください。
演奏会を予定していて、本番前にピアニストと合わせができる場所を横浜で探していたところ、ピアノスタジオ aile 横浜を見つけたのがきっかけです。横浜駅からアクセスしやすく、Web上で予約から支払いまで簡単に済ませられ、スムーズに利用できるのも魅力的でした。
Q. 実際に利用してみて印象に残った点はありますか?
まず、ピアノの種類が豊富なことが印象に残りました。本番で使用するピアノと同じメーカーのものがあったので、ピアニストも喜んでいました。また、ピアノがきちんと調律されていることに加えて、スタジオ自体もとても清潔なので、長時間の練習やリハーサルでも気持ちよく過ごせる環境だと思います。

Q. グランドピアノで練習するメリットをどのように感じていますか?
アップライトピアノとは楽器の構造や響き方そのものが違うので、ピアニストの方はもちろん、声楽やほかの楽器にとっても、できるだけ普段からグランドピアノと一緒に練習することは大切だと思います。本番ではグランドピアノと一緒に演奏する機会が多いので、その響きや音量に慣れておくという意味でも大切です。声楽の場合は特に、ピアノの響きの中で、自分の声がどのように聞こえるのか、どのくらいのバランスで演奏するとお互いの音が生きるのかを確認できます。
Q. ピアノスタジオ aile 横浜はどのような方におすすめだと思いますか?
清潔で集中できる環境が整っていて、質の良いピアノがさまざまな種類から選べるので、特にピアノをしっかり練習したい方にはとても良い環境だと思います。こまめに調律されていて、調律日を確認できるのも演奏者として安心できるポイントです。また、30分単位で予約でき、横浜というアクセスの良い場所にあるので、仕事や学校、ほかの予定に合わせて利用しやすいと思います。個人練習だけでなく、声楽やほかの楽器との合わせ、本番前のリハーサルなどにも使いやすいスタジオだと感じています。
Q. 最後に、音楽を学んでいる方や演奏を楽しんでいる方へメッセージをお願いします。
音楽を続けていると、思うようにいかなかったり、人と比べてしまったりすることもあると思います。私自身も、なかなか結果につながらない時期がありました。でも、できなかったことが少しずつできるようになったり、今まで気づかなかった音楽の魅力に出会えたりすることが、続けていく楽しさでもあると思っています。演奏することは、自分自身と向き合う時間でもあり、聴いてくださる方とつながる時間でもあると思います。音楽を学んでいる方も、趣味で楽しんでいる方も、それぞれのペースで楽しみながら続けていただけたら嬉しいです。私自身もまだまだ試行錯誤の途中ですが、これからも新しいことに挑戦しながら、自分の音楽を探し続けていきたいと思っています。
